活躍している日本人研究者

東京医科歯科大学名誉教授の井上昌次郎は、ウリジンと酸化型グルタチオンという2つの物質が睡眠物質としての働きがあることを発見しました。

そして、この2つの物質が相互に補いあいながら睡眠を起こさせるしくみがあることを明らかにしました。

この働きは以下のようなものです。神経と神経の伝達には、神経伝達物質が神経の末端から放出されて、次の神経に影響を与えますが、神経伝達物質には「興奮性」と呼ばれる神経の働きを活発にさせる物質と、「抑制性」と呼ばれる神経の働きを抑える物質があります。

ウリジンは「抑制性」の神経伝達物質GABA(ギャバ=ガンマアミノ酪酸)の働きを促進し、酸化型グルタチオンは「興奮性」の神経伝達物質グルタメートの働きを抑える作用があります。

これらが、抑制を強め興奮を抑えるというように、補いあうように働きます。全体として神経の興奮が抑えられてくることによって、眠気が起きてくるというわけです。

さてフォン・エコノモの研究以来、視索前野や前脳基底部と呼ばれている部位がノンレム睡眠の出現に関係していることが知られるようになりましたが、大阪バイオサイエンス研究所の早石修らのグループは、プロスタグランジンD2(PGD2)が睡眠物質として、この部分に関係していることを明らかにしています。

PGD2は、前脳基底部に作用し、アデノシンを介して腹外側視索前野の活動を高めます。腹外側視索前野は、睡眠調節に関係していると考えられています。

また、アデノシンは「抑制性」の神経伝達物質の働きを促進して結節乳頭核にあるヒスタミンという覚醒を起こさせる物質の働きを弱めて睡眠を起こさせます。

さらに最近注目されている物質は、オレキシンです。オレキシンは、1998年に当時米国・テキサス大学で活躍していた柳沢正史らのグループが新しい神経ペプチドとして同定しました。

その後、この物質を産生する神経細胞は、摂食中枢がある視床下部外側野に存在することや、摂食だけでなく睡眠の制御に強くかかわることがわかってきました。

また、オレキシンは、上行性網様体賦活系や、ノンレム睡眠を発現させる視床下部のメカニズムにも影響を与えています。